1-1 研究目的及び概要
日本の戦後史は、GHQによる土地改革・財閥解体・教育改革などから記述されてきた。しかしながら、戦後日本の最初の国家プロジェクトは、海外在住日本人約660万名(軍人350万人、一般邦人310万人)の引揚事業であったことは、忘却の彼方に追いやられつつある。60数年という過ぎた歳月が主原因だろうが、その海外引揚者が高齢化し、もはやその生存者も残り少なく、引揚体験を語る方々も急速に消滅していることも一因と考えられる。
また日本在住の外国人:韓国人・中国人など約100万名の母国への帰還事業も、日本政府とGHQの重大な課題であった。なぜならば、戦争被害者である彼ら外国人に対する人道的救済措置であったからだ。
引揚者と帰還者に関する良質な研究資料3大コレクションが九州大学に所蔵されている。その数、約5万点以上に及び、時価総額は6千万円を超えると推定される(古書店評価)。これは、いうまでもなく日本でも有数のコレクションといえる。しかしながらこのことは学内外にほとんど知られていない。
1,梁三永コレクション
2,辛基秀コレクション
3,森田芳夫コレクション
それもそのはず、所蔵者から九州大学に寄贈を受けた、三コレクションの内、辛基秀・梁三永両コレクションは、九州大学への搬入資金さえ捻出できておらず、今なお寄贈者が保管したままである。唯一森田コレクションだけは、学内の教員有志による拠出金で九州大学へ搬入したが、その後の整理資金欠如のため、段ボール梱包を解くことすらできていない。梱包されたままである。
これらのコレクションは、元来教育・研究用に活用されるべく提供されたはずであるが、寄贈者の意思とは異なり、今なお九州大学が放置して、学界や市民に有益な学術情報として提供できない悲惨な状態は、篤実な寄贈者に対する非礼でもある。
本研究プロジェクトでは、まず九州大学への搬入を終えていない辛基秀・梁三永両コレクションを、それぞれの所蔵者(東京と大阪)から引き取る作業から開始しなくてはならない。その上で資料所蔵情報を公開するための基礎調査を徹底的に実施し、整理し、目録情報を作成し、データベースとして公開する基礎的作業を行わなくてはならない。このことによって、初めて九州大学が社会・学界への責を果たし、寄贈者の厚意を無にしないはずである。
同時にこれらのコレクションを積極的に活用し日本の戦後史を解明するために、同コレクションに含まれていない戦後史関連資料の調査・補完作業を積極的に推進する。このような作業を通じて、大学院生を始めとした次世代研究者の育成を図ると同時に、同コレクション活用の利便性を高める。さらに、コレクションの活用方法・整理方法を学ぶために、全国各地に所蔵されている個人コレクション所蔵機関および研究者との連携をとり、より有効な公開方法や研究活用方法を考究する。
以上のような具体的事業を通じ、最大の引き揚げ港博多港を要する福岡に位置する九州大学を、戦後史研究の中心地へと押しあげていくことが本研究課題の最終的な目的である。
各文庫の利用について
現在、各文庫の整理作業を進めています。配架・目録作成が終了次第、公開予定ですので、しばらくお待ちください。
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